林芳正の訪中まとめ(4.1-4.2)

 林芳正外務大臣が、4月1-2日の日程で、訪中した。秦剛外交部長、王毅政治局員、李強総理と面会が実現した。

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秦刚指出,福岛核污染水排海是事关人类健康安全的重大问题,日方要负责任地处置。美曾用霸凌手段残酷打压日本半导体产业,如今对华故伎重施。己所不欲,勿施于人。日本切肤之痛犹在,不应为虎作伥。封锁只会进一步激发中国自立自强的决心。日本是七国集团成员,更是亚洲一员,应正确引导会议基调和方向,多做有利于地区和平稳定的事,凝聚国际社会真正共识。

 (秦剛は、福島原発の「核汚染水」の海洋放出は、人々の健康安全にかかわる重大な問題であり、日本側は責任をもって処理しなければならないと指摘した。アメリカは、かつて強圧的な手段で残酷に日本の半導体産業を圧迫したが、今や中国に対してそのやり方を再び用いている。己の欲せざるところ、人に施すこと勿れ。日本は身に染みた痛みがまだあるのに、アメリカの手先となるべきではない。封鎖は中国をさらに自立自供へと向かう決心を高めさせるだけだ。日本はG7のメンバーであるが、アジアの一員でもあり、会議の基調と方向を正確に導き、地域の安定と平和に結びつくためになるようなことを多くなし、国際社会の真のコンセンサスを凝集していかなければならない。)

秦刚强调,台湾问题是中国核心利益的核心,事关中日关系的政治基础。中方敦促日方恪守中日四个政治文件的原则和迄今承诺,不得插手台湾问题、不得以任何形式损害中国主权。

 (秦剛は、台湾問題は中国の核心的利益の核心であり、中日関係の政治的基礎にかかわると強調した。中国側は日本側に中日の四つの政治文書(1972年日中共同声明・1978年日中平和友好条約・1998年の日中共同宣言・2006年の「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明)と現在までの合意を遵守し、台湾問題に介入してはならず、いかなる形においても中国の主権を傷つけてはならない。)

 他に、いわゆるアステラス製薬の社員拘束問題や、日中韓サミット、朝鮮半島問題についても協議した。

 やはり半導体規制は気になっているようである。日本が1980年代に日米半導体摩擦で大変な目に遭ったことを引き合いに出し、アメリカにあんな目に合わされたのに、手先になるのかと主張して、できるだけ日米離間を図りたいようだ。

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 続いて、王毅との会談。

  王毅表示,当前中日关系保持总体稳定,但不时出现各种杂音和干扰。根本原因在于日国内一些势力刻意追随美国的错误对华政策,配合美方在涉及中方核心利益问题上抹黑挑衅。此举在战略上是短视的,政治上是错误的,外交上更是不明智的。中国对日政策保持连续性和稳定性,愿同日方一道,以纪念中日和平友好条约缔结45周年为契机,总结历史经验教训,在中日四个政治文件基础上构建契合新时代要求的中日关系。希望日方回归缔约初心,重温条约精神,恪守条约原则,摆脱零和思维,以实际行动将两国“互为合作伙伴、互不构成威胁”的重要共识落到实处,共同把中日关系改善好、发展好。

 (王毅は、目下の中日関係は全体的には安定しているが、時々各種の雑音や干渉が入ってくると述べた。その根本的な原因は日本国内の一部の勢力が極力アメリカの誤った対中政策に追随し、アメリカが中国の核心利益にかかわる問題に泥を塗り、挑発することに協力しているということにある。このようなふるまいは戦略的に近視眼的で、政治的には誤りで、外交的にはなおのこと愚かである。中国は対日政策の連続性と安定性を保ち、日本側とともに、日中平和友好条約締結45周年を契機として、歴史の経験と教訓を総括し、日中の四つの政治文書を基礎として、新時代の要求に合致した中日関係を築きたいと考えている。日本側に、締結時の初心に帰り、条約の精神に立ち戻り、条約の原則を遵守し、ゼロサム思考から離脱し、実際の行動によって両国の「互いに協力のパートナーとなり、互いに脅威とならない」という重要なコンセンサスをしっかりと実現しすることで、ともに中日関係をもっと改善し、もっと発展させるよう望む。)

 やはり、西側諸国が一枚岩になるというのが、中国としてはやりにくいわけだろう。できればトランプ政権期のように米・欧・日がそれぞれの思惑でそれぞれ動いてくれる方がいい。なんならウクライナ戦争のせいで、西側諸国が結束し、とんだとばっちりだというのが、本音ではないか。

 最後に、李強との会談。李強はやたらにこにこしていたのが印象的であった。

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  李强指出,历史、台湾等重大原则问题事关两国关系政治基础,应该以诚相待、以信相交、妥善处之。中日作为重要经贸伙伴,在实现各自发展方面相互促进、彼此成就,利益深度融合。双方应该也完全可以做大经贸合作的蛋糕,在数字经济、绿色发展、财政金融、医疗养老等方面加强合作,实现更高水平的互利共赢。欢迎日本继续深化对华合作,共享中国经济发展红利,续写中日互利合作新篇章。亚洲是中日两国安身立命的共同家园。希望两国一道维护自由贸易,践行真正的多边主义,积极推进区域一体化进程,维护产业链供应链稳定畅通,共同减少不确定性、增添稳定性,为地区和世界发展作出应有贡献。

 (李強は、歴史・台湾など重大な原則問題は両国の政治基礎にかかわるので、たふぁいに誠心誠意、信義をもって交わり適切に処理すべきであると指摘した。中日は重要な経済貿易パートナーであり、各々の発展分野で互いに促進しあい、互いに成果を得ることで、利益は深く結びついている。双方は経済協力のパイをより大きくすべきだし、完全に大きくすることができる。データエコノミー・環境発展・財政金融・医療老人福祉などの分野で協力を強め、より高いレベルでのウインウインを実現できる。日本が引き続き対中協力を深め、中国経済の発展の利益をともに享受し、中日のともに利益となる協力関係の新しい一ページを切り開くことを歓迎したい。両国がともに自由貿易を擁護し、真の多国間主義を実践し、地域の一体化過程を積極的に進め、産業サプライ・デマンドチェーンの安定・円滑化を守り、ともに不確実性を減らし、安定性を高めて、地域と世界の発展のためになすべき貢献をすることを望む。)

 李強は、微笑外交で林外相を迎えたようだ。つまり、要求すべき話は、外交当局に言わせておいて、自分は経済協力に関する内容に重点を置いたということだろう。李強は、以前から経済協力に積極的であることは知られており、自らの役割分担としての発言と思われる。